椎乃味醂(しいのみりん)と申します。 このたび、2nd Album『解釈系』と、2nd EP『ハーモニー』を、2025年11月29日に同時リリースする運びとなりました。 2nd Album『解釈系』は、「向かい合うこと」を主題とし、これまでの思索をひとつにまとめ上げた作品です。新曲は多くありませんが、全楽曲再録・アップデートをしており、新鮮な感覚で楽しんでいただけると思います。2nd EP『ハーモニー』は、「他/他者がいること」を主題とし、ぼくのリリースでは初めて人間歌唱を中心に据えた作品です。多方面からアーティストをお迎えし、新しい椎乃味醂の可能性を探るきっかけとなりました。 ぼくは今、無数の人々との関係に支えられて存在しています。単線的でない、複雑で、もはや追跡すらできないような様々な繋がりが、ぼくを形作っています。この制作は、今日に至るまで重ねてきたそれらが、ひたすらに可視化される作業でもありました。 はじめて、ミキシングエンジニアリングを人と一緒にやりました。頼んだのは、ベースミュージックのフィールドで活躍するDairou TanakaくんとVOLTAくんの2人です。元々いる場所を飛び越えようとしていなかったら、きっと出会えていなかった2人です。彼らは、彼らの住まう場所で培った見知らぬやり方で、新たな角度から楽曲をアップグレードしてくれました。また、同じくベースミュージックに近しいtoneclusterrさんと、ロック・ポップス方面からはエイハブのソガも、それぞれの耳で、仕上がりに対しセカンドオピニオンをくれました。 長らく相棒としてやってきた柚璃遥は、今回も最高なジャケットを生み出してくれました。また、グラフィックプログラミングをながいさん、文字組みをkohakunoさん、WEB実装をnaporitanさんにお願いし、それぞれ素晴らしい仕事をしてくれました。ぼくが3年前、領域横断を掲げた自主制作スタジオ「StudioGnu」を立ち上げた際、全く別のフィールドから来てくれた3人です。 今回、何かしらの形でご縁がある方々から、我儘ながらリリースコメントのご寄稿を賜りました。聴いて頂きたいと思った方に粛々とお声掛けしていたつもりなのですが、集計したら凄まじい人数になっておりました。加減知らずにこんなに頂いてしまって申し訳ない…とおもいつつ、この場を借りて改めてお礼申し上げます。 ご寄稿をお願いした方々は、仕事をご一緒した方、憧れの先輩、よく遊ぶ仲間まで様々です。そしてみな、ぼくの大好きな方々です。やっていることも千差万別で、ぼくの作品や思考とは180°違う位置にいる方もいます。しかし、それぞれの縁のなかで、ある時は直接的な会話を通して、ある時はその方から発せられるクリエイティブを通して、ぼくは色々なものを受け取り続けてきました。声をかけられなかった人や、スケジュール等で叶わなかった方もいますから、それを含め本当に多くの人によって、ぼくはぼくたらしめられ、ここに立っています。 こうして振り返ると、直接・間接に伸びる縁と偶然の連鎖が、作品を推し進め、この2枚にたどり着かせてくれたのだと改めて思います。色々なモノから少しずつ力や知恵を頂き、やってきたことを痛感します。今回直接関わっていただいたアーティストの皆さん、装丁に関わってくれたスタジオメンバー、周りの友達、敬愛する先輩後輩、はたまた音楽と直接関係しない場の人達に至るまで、実に様々な角度からの入出力があったように思います。 今、社会では分断が深刻になっています。細分化した価値観は、対立の回避を構造上難しくしています。調和や連帯と言うのは簡単ですが、多様な立場が並ぶ世界で、考えなくそういった言葉を他者に迫ることも、無責任な行いに思います。 しかし、複雑な関係性や価値観が互いに補完し合うことでしか生まれない何かを、ぼくは身を持って体感してきました。その過程では、異なる距離や温度感を抱えながらも、リスペクトや向かい続ける信念を以て、何かを必死に共有しようとする、人間的な営みがありました。ぼくのクリエイティブは、ずっとその連続で成り立ってきました。だから、こうした姿勢を何か形にすることは、分断される社会と向き合う上で、個人にとっても大きな意味を持つし、ぼくにできる仕事の一つだとも思いました。解釈系は、その内的な実践でした。ハーモニーは机上を越えて、実際に人を迎えた実践です。こうして2枚の作品を世に出せることを、とても嬉しく思います。 関わってくださったすべての方々、ご寄稿下さった皆様、そしてこの文章を最後まで読んでくださった皆様に、あらためて深く感謝申し上げます。この二つの作品が、それぞれの場所で、皆さんの中のどこかと結びつき、何かしら意味が生まれることを願っています。


解釈系 2nd Album CD
¥2,900









































